園だよりから【12月】“時”の中に成長の足跡を刻む

                    “時”の中に成長の足跡を刻む

                       -9月からの幼稚園生活を振り返る中で-

                                                  園長 橋 本 光 生

            『 我が行く  天地万象  凍(い)てし中   高浜  虚子

歳時記を開くと「凍(い)つる」は、「寒気にさらされ、地上のあらゆるものが凍ってしまう」

とあるほか、「凍るように感じる」と書かれています。このところ小春日和の日があっても

来週には二十四節気の大雪へと続き、これからは「凍つる」日が多くなりそうです。

さて、先月の園だよりのために時計の歴史を調べていたら、ギリシア語には「時間」を

意味する言葉が二つあるのを知りました。一つを「クロノス」と言い、年・月・日・分・秒のように

量的・物理的な時間があること。もう一つは「カイロス」と言って、二度と訪れない決定的な瞬間、

質的な時間があると言うのです。『時間は流れるもの。時は刻むもの』と言いますが、

「流れる時間」は時計や暦で確認できる「クロノス」であり、その日、その時、その瞬間を大事にする

という意味で「時を刻む」ことは、「カイロス」だと言えそうです。

ところで、9月の通常登園から4か月目に入ると、早くも一年を締めくくる月になります。

この間の子供たちは、運動会や保育参観でもご覧いただいたように、成長を重ねる毎日でした。

とりわけ、どの子も様々なことを経験する中で、できることを増やしていきました。

また、友達と仲よくすることで自分も友達も楽しい時間を過ごし、笑顔になることを学年が進んでも

学びました。年少組では、運動する(汗をかく)楽しさを身につけましたし、みんなでお弁当を

食べる楽しさも知りました。学年を問わずこれらの「できることが増えた」のも、やっていて

「楽しくなった」のも、すべて「カイロス」のごとく時を刻む中で培われたものです。

そして12月も、寒さに負けず夢中になって遊ぶ子供たちの姿から、新しい年も『我が行く』

とばかりに活躍するに違いないと、思わせてくれるはずです。

思い起こすと一学期の始業式と入園式の次の日からは休園にし、休園が明けてもコロナ対策に

苦心する中で、子供の確かで豊かな育ちをいかに実現するか、苦慮する日々でした。

来年こそは誰もが「いつも伸びらかであれ。そして早く日常の生活を」と願い、

この一年の保護者の皆様のご理解とご協力に感謝申し上げます。