園だよりから【6月】人は人中(ひとなか) 木は木中(きなか)、そして子供は子中(こなか)で育つ

人は人中(ひとなか) 木は木中(きなか)、そして子供は子中(こなか)で育つ

                                      園長 橋 本 光 生

六月を迎えると言うのに、先週から照り続いた日差しは梅雨を通り越して、すっかり夏のものでした。

そんな中で一昨日の雨は、園庭を見下ろす大ケヤキや園舎を囲む草花たちには、恵みの雨だったに違いありません。

でも、先般、記録的な豪雨が屋久島を襲った際の映像は、まるで地獄絵図のようでした。

一人の犠牲者も出さなかったことが、本当に不幸中の幸いでしたし、

登山者(観光客)を助ける救助隊員の姿がとても勇敢で頼もしく、敬服するばかりでした。

ところで、その屋久島で育つ杉をすべて「屋久杉」と呼ぶのだと思っていましたが、

「屋久杉」とは標高500m以上の山地に自生する杉のことで、

狭義には樹齢1000年以上のものだけを指して、1000年に達しないものは小杉(こすぎ)と言うほか、

植樹した杉とも区別しているそうです。

その「屋久杉」ですが、中には縄文杉とも呼ばれるほど数千年も生き続けてこられたのには、

周りの助けがあってこそのことだと聞きました。

その理由は、こうです。

初めに種子が地面に落ちて芽を出しても、周りを木に囲まれ、その中で最適の温度と湿度に恵まれ、

雨や風からも守られないと、育っていかないと言うのです。

その後も、一本立ち、二本立ちだとやがては枯れて、長い年月を重ねることはありません。

このことを指して屋久島では、「木は木の中で育つ」と言い、

人も然りと「人は人中、木は木中」の格言が生まれました。

折しも、組体操や鼓笛の練習を始めた年長組の子供たちも、

運動会で披露する姿は、一人では達成できない、学級や学年の仲間と一緒になって創り出す成果です。

まさに「子供は子中」と、子供の中で育つ姿です。

もちろん、子供たちの間でも、時にはトラブルがあります。

でも一緒にいれば、互いに学び合い、高め合い、助け合えて、

しなやかな心身の発達がたくさん生まれます。

これは年長の子だけでなく、年少から年中の子すべてに、そうです。

今度の土曜参観でも、そうした姿をぜひご覧ください。

屋久島の果敢な救出劇とはまた違う、わが子の頼もしくて嬉しい一面を、発見していただけるはずです。