園だよりから【7月】梅雨時雑感2 -「雨が降ると、天気が悪い」と言うが、雨の日もまんざら………-

梅 雨 時 雑 感 2

-「雨が降ると、天気が悪い」と言うが、雨の日もまんざら………-

                       園長 橋 本 光 生

六月から七月にかけて、雨に濡れて瑞々しさを増した緑が、まさに初夏ならでは景色に思えます。

そして、梅雨があるから夏があり、秋が来る。

そんな四季の移り変わりに思いを馳せながら、梅雨の晴れ間に遊ぶ子供たちを、事務室から眺めています。

その中を、つい先日まではアジサイ園のアジサイは、どれも控えめな淡い緑色と思っていたのに、

いつの間にか紫や青紫、赤紫に変わっていて、

『枕草子』にある

「花も糸も紙も すべて なにも なにも むらさき なるものは めでたくこそあれ」と、

湿った気分も清楚なものに変えてくれます。

でも、『しろばんば』や『あすなろ物語』『天平の甍』『敦煌』『氷壁』など

少年文学から歴史小説、社会派小説まで、

幅広いジャンルで作品を残した作家の井上 靖氏は、

雨の中に咲くアジサイを「どうも好きでない」と言い、

「雨をしっとりと吸って重たげでもあり、多少憂鬱げでもあり、こうした時期に咲かねばならぬ花としての諦めも持っている」

との文章に触れると、

“雨の日”を“天気が悪い”と言うように、雨が降ることはいけないことで、

花の色が変わるアジサイを「七変化」「八仙花」と呼ぶことも無節操なことだと思えてしまいます。

ちょうど子供が、何かよくないことをして、「この子は、いつもこうなんだから」と決め込むように。

ちなみに、雨がよく似合う「アジサイ」の語源は、一説には「藍色が集まったもの」を意味する

「アヅサイ(集真藍)」からきているそうです。

その様は、小さくて愛らしい花が一カ所(幼稚園)に集まって、

各々に変化(成長)していく、本園の子供たちが育ち合う姿と全く一緒です。

しかも、先日の保育参観でご覧いただいたように、気が付かぬうちにわが子も、

こんなにたくさんのことができるまでに変わっていたと、喜んでいただいた姿です。

そんな中、雨の日には、どの子も部屋の中で何かしらの遊びを見つけては友達と愉快に過ごしており、

それはそれでいて楽しそうで、

「雨の日もまんざらでない」と思わず口をつく、そんな梅雨時の独り言でした。