園だよりから【2月】稽古とは 一より習い 十を知り 十より返る もとのその一
稽古とは 一より習い 十を知り 十より返る もとのその一
園長 橋 本 光 生
かわいた風に吹かれて舞う落ち葉の音が、冷気と共に、ますます静けさを際立たせています。
さて、標題の和歌は、茶道に嗜みのある方ならご存知の、茶人 千利休が詠んだ(とされる)
『利休道歌(百首)』の中の一首です。
各クラスの前を通るたびに、おひな祭り会の練習の声が流れてきて、この歌を思い浮かべながら聞いていました。
「稽古事なるもの、一から始めて十まで進んだら、また一に返ってやり直しなさい」という、
初心の大切さを教えるものです。
とは言え、稽古の都度いつも「一」に戻っていたら、なかなか上達しないのではと思えてしまいます。
実は「十より返るもとのその一」の「一」は、最初の「一」とはまるで違う、次元の高い「一」なのです。
ちょうど、おひな祭り会の台詞や演技が、練習するごとに自信と正確さを備え、同時に上手になっていく自分を感じて、
ますますやる気になっていく、そんな「一」なのです。
さらに「もとのその一」について言うと、昨年のおひな祭り会でもそうでしたし、一昨年もそうでした。
出番の多い役をはじめ、いろいろな役に立候補した子が、決まったのは例えば名前のない“村の子供”の役だったとしても、
気落ちすることなく練習に臨み、練習するうちに、みんなでやることのおもしろさが分かってきて、
いっそう練習に励んでいたことです。
それは、繰り返し練習して得た「優れたもとの一」の何物でもありません。
来月末に控えた今年のおひな祭り会でも、きっと同じ光景が見られるに違いありません。
ところで、『一隅を照らす』と言う言葉があります。
一隅とは片隅のことであり、自分が照らせる小さな場所のことです。
その場所を一人ずつが照らすと、小さな灯りも万の灯りになり、
ひいては社会全体を照らす灯りにもなるという禅の教えです。
おひな祭り会で各自が担う役も小さな灯りと言えます。
それらが集まり一つになると、1+1は2ではなく10にも20にもなってクラス全体のパワーにもなり、
私たちの胸を熱くするのです。
そんなおひな祭り会を、今年も披露します。
一年間の成長の証として発表するわが子の姿を、どうぞご期待ください。