園だよりから【5月】「見えなくなる線」を土台にして育つ子供たち
「見えなくなる線」を土台にして育つ子供たち
園長 橋本光生
青葉や若葉が日増しにまさると、園歌に歌う
“おはなが いっぱい みどりの のうえん”
の通り、まさに新緑の五月が南幼稚園の季節のように思えます。
ところで、次の文章は平山郁夫美術館の館長・平山助成氏が
「見えなくなる線」と題して紹介した、
文化勲章を受章し、シルクロードの絵で著名な日本画家・平山郁夫氏のエピソードです。
日本画の特徴は線・描線です。
兄・郁夫は描線の鍛錬のためスケッチ(デッサン・写生・素描)を終生続けておりました。
描いたスケッチ等は膨大な数になります。
本画を描く手順は、本画と同じ大きさの下図を線で描きます。
本画の和紙の上に転写紙(チャコぺーパー)を置き、その上に下図を重ねます。
下図の描線をボールペンでなぞり、本紙に写し取ります。
写し取った描線に筆で墨を入れ、線画ができます。
それから絵の具を塗り重ねる厚塗の手法で描いています。
線は画面から見えなくなりますが、
墨を入れる時には、精魂を込めて線を描いていました。
見えなくなる線を一番大切にしていました。
さて、進級・入園から3週間が過ぎ、
学級担任との信頼関係がどんどん築かれていくのに合わせて、
どの子もできることが着実に増えた、この頃です。
さらに、連休明けの五月の二週目からは、
これまで見たり、聞いたり、やったりしたことが、
力となって一段と行動になって表れてきます。
その様は、たくさんの経験や子供自身の努力、時には我慢や辛抱など、
ちょうど平山郁夫氏が大切にした「見えなくなる線」と同じく、
これらを土台にして伸びていく姿です。
初めてのことが多く緊張の連続だった四月を経て迎える五月は、
子供たちのそうした努力や頑張りを大いに認め、思い切り褒める、
そんな五月でありたいと思います。
冒頭の
“おはなが いっぱい”
と歌う一つ一つの花は、どれも愛らしく、
それでいて一本だけではちょっとした風でもゆらりと揺れて、
それでも一同に集まると五月の空に見事に映える、
それが南幼稚園の子供たちのようであり、南幼稚園の自慢の風景です。